#2 「サクラ巻き組が行く!その2(戦艦大和大爆破の巻)」
おれ達は、懲りもせず次の爆破大作戦を考えていた。
その頃は、プラモデルを作るのが流行っていた。
そのうちでも特にメインだったのが、そう
軍艦である!
当時は、みんなが当たり前のように戦艦や空母を作っていた。
その後主流となる「ウォーターライン・シリーズ」が発売される前のことである。
(「ウォーターライン・シリーズ」とは各プラモデルメーカーが合同で企画したもので、
いろいろなメーカーがひとつのブランドで軍艦のプラモを発売していた。縮尺もたしか
1/700で統一されていて、空母の上に載せる搭載機も1cmくらいでとてもかわいく、
かっこよかったものだ)
当然、軍艦のプラモはモーター付きで水の上を走らせるものであった。
おれ達は放課後、町内の公園に集合した。たかし、まさし、しんじ、おれの4人が集まった。
今日の爆破の獲物はそう、戦艦大和である!
作戦は戦艦大和爆破大作戦と名付けられた。
たかしは手に1/350の戦艦大和のプラモを持っていた。
たかしの気の弱さにつけ込んで、持ってこさせたのだ。
たかしは、心なしかしょんぼりしているように見えた。
近所には川があったのだが、やはり流れがあるためプラモの戦艦を走らせるには不向きだった。
(川で遊ぶには、マブチの船外モーターか水中モーターが使える船が必要だった)
流れが無くて、それなりに大きいプラモの船を走らせる場所はここしかない!そう・・・
学校のプールである!
せっかく作ったプラモを爆破し、沈める!(たとえ他人のでも)
なんというカタルシス!
子供心におれ達は異常に興奮していた!
もうすでにプールは終わっている季節だった。
おれ達は薄暗くなった頃、金網の破れたところから学校のプールサイドに進入した!
まずは、サクラ巻き1本で挑戦だ。
艦橋のところに、輪ゴムでサクラ巻きをセットした。
火をつけるのは、もちろんたかしである。
たかしの目は心なしか潤んでいるように見えた。
「ウィーン!」
スイッチを入れて、大和を水の上に浮かべる。
たかしは、長めにした導火線にマッチで火をつけた!
「ウィーン!シューッ!」
戦艦大和は滑らかに水の上を走っていく。そして、数秒後・・・!
「パーンッ!」
情けない音とともに艦橋が吹っ飛んだ!しかし、沈没もせず大和は25mを走り切った!
「こんなんじゃだめだー!」
たかしを除いた、おれ達全員が同時に叫んでいた!
まさしは、たかしからマッチを奪い取っていた。
しんじは大和の甲板の部分を取り外してサクラ巻きを大和の胴体全体に詰め込んでいる。
「コレで勝負だー!」
おれはしんじに協力して、マッチ棒と新聞紙を大和の胴体に詰め込んでいた。そう、
火災を起こさせるためである!
準備が完了した。たかしは、もうあきらめがついたようだ。
目が爛々と輝いている!もちろん、おれ達全員がそうだった!
いよいよ本格的な爆破のスタートだ!
まさしがマッチをこすり、かなり長くした導火線に火をつけた!
「ウィーン!シューッ!」
戦艦大和は重そうに水の上を走り始めた。
おれ達はなぜか直立不動の体勢で最後の航海に出た戦艦大和を
敬礼しながら見送っていた。
そして長い長い数秒後・・・!
「パン、パン、パパパパン、パパ、パパン、パン!」
さっきと比べると、ケタ違いの激しい爆発音!
大和は激しい火災を起こし、黒い煙を上げながら、それでも進んでいた!
しかし、そのうち真っ二つに折れながら、大和はゆっくりとプールの底に沈んで行った!
おれ達は、その様子をただボーッと見ていた。
「じゃあ」
おれ達は寡黙なまま、それぞれの家路についた。もうすでに、あたりは真っ暗になっていた。
その時は、なぜかもの悲しい気がしていた。なんとなく・・・。
しかし、その後もプールでの爆破大作戦は続行された!
各自が持ち寄ったプラモの軍艦を、片っ端から爆破した。
(潜水艦はむずかしくて、最後まで成功しなかったが)
今思うと不思議だが、先生に見つかることもなく(なぜだろう?)かなりの戦艦や空母を撃沈した。
そのうち、みんなこの爆破に飽きてしまい、いつの間にかこの爆破作戦は行われなくなった。
おれ達がこの爆破作戦の大失敗を痛感するのは、そう、
次の夏の初めのことである。
夏の初めには、プール掃除をする。その時・・・!
プールの底からおびただしい数のプラモとサクラ巻きのカスが発見された!
おれ達の悪事は、間もなく先生の知れるところとなり、こっぴどく説教される目にあった。
それでも・・・!さくら巻き組は行く!(つづく)
タハハ度(5点満点で) 3点!