#2 「隠れ続けた男!」
6月のある日、彼は家出をした。ほとんど体ひとつの状態で。
彼は高校2年生。行く場所と言えば1カ所しかなかった。
そう、ひとつ年下の彼女の家である。
彼女は学校の後輩である。わりとまじめな女の子だった。
その家は普通の一軒家で、もちろん彼女の両親と一緒に暮らしていた。
彼女は一人っ子だった。
彼は深夜、スキをみて彼女の家に忍び込んだ。(もちろん、彼女の手引きのもとにである)
足音を殺しながら階段を上り、2階にある彼女の部屋に入った。
彼は決心していた。
「居られるだけここに居てやるぞ!」と。
毎日、授業があった。彼女は当然のごとく、朝になると学校に行く。
彼は彼女の部屋に潜んでいた。息を殺して、押入の中に。
彼女が買ってきてくれた食料を食べながら、息を潜めていた。
トイレは出来るだけ我慢した。小さい方は、最悪ペットボトルの中に済ました。
夕方になると、彼女が帰ってくる。
お母さんが買い物に出かけたスキに、シャワーを浴び、トイレを済ます。
慌ただしく用を済ますと、そそくさと彼女の部屋に戻る。
夜は彼女と一緒にベットで寝た。楽しい時間だった。
最初のうちはうまくいっていた。しかし、だんだんと彼女は冷たくなっていった。
親の目を盗んでの食料の調達、ペットボトルの中身の処理。
着替えのこと、ゴミの処理、性欲の処理・・・。
彼女は学校に居ても、彼の存在が親にばれるのを心配しなければならなかった。
ストレスが溜まってきて、彼の存在がうっとうしくなってきたのだ。
それでも1週間が過ぎた。
彼女はほとんど彼と口をきかなくなっていた。
それでも彼は、こんな生活が楽しかった。
9日目の夜、2人は大喧嘩をした。
ささいなことが原因だったが、彼女はヒステリー気味だった。
それでも、大声は出せなかった。
彼は、しかたなく押入で寝た。
10日目の朝、彼は押入の中で目を覚ました。
腹が痛い!
押入で寝たので、腹が冷えたのか?
彼は我慢した。夕方になれば、お母さんが買い物に出かけるのだ!
そうすれば、トイレに・・・。それまでの我慢なのだ!
彼女と仲直りして、この生活を続けるんだ!そして、また一緒にあのベットで・・・。
彼は本当に頑張った。夕方まで我慢したのだ。
お母さんが買い物に出る気配がした。やった!
彼は急いで階段を下り、トイレに飛び込んだ!
しかし、あまり楽にはならなかった。
トイレのドアを開けたとたん、彼の目に飛び込んで来たモノは!
「あなた、いったい誰?」お母さんだった。
しまった!きっと回覧板でも隣に届けて来ただけだったんだ!
「ギャーッ!」大声で叫ばれてしまった!
彼は靴も履かずに彼女の家を飛び出した。悲しかった。
彼はしかたなく自分の家まで歩いた。裸足のままで。腹も痛い。
自分の家に帰ると、当たり前だが両親にこっぴどく怒られた。
警察に捜索願いを出したといわれた。悲しかった。
あまりにも腹が痛いので、病院に行った。盲腸で手術だと言われた。
もっと悲しかったのは、久しぶりに学校に行ったときのことだ。
下駄箱に見覚えのある靴が入っていた。彼女の家に置いてきた靴だ。
彼女とはその後、連絡を取っていなかった。
靴の中に手紙が入っていた。彼女からの手紙だった。
その手紙にはただ一言だけこう書いてあった。
「別れましょう」
彼はこの家出で2つのモノをなくした。
そう、彼女と盲腸である。
トホホ度(5点満点で) 2.5点!